上殿皮神経(Superior Cluneal Nerve:SCN)からの腰痛というものが存在します。
これは1997年にMaigneにより報告されたものである(1)。
上殿皮神経障害は、神経が腸骨稜を乗り越える際にosteofibrous tunnelを通過するものに発症しやすいものであるとその際に述べている。
まとめから
上殿皮神経障害
頻度:腰痛の10%程度を占める
症状:神経支配領域の痛み。腰下肢痛もある
治療:神経ブロックがベース。皮膚を緩ませる
症状:神経支配領域の痛み。腰下肢痛もある
治療:神経ブロックがベース。皮膚を緩ませる
上殿皮神経とは
SCNはTh11ーL4の後根神経の皮枝が腰背部を下外側へ走行し、腸骨稜近傍で胸腰筋膜を貫通して殿部へと至る神経(1)。引用:触れて分かる腰痛診療 |
上殿皮神経障害の頻度
Maigneらは、坐骨神経痛がない腰痛患者の1.6%が上殿皮神経障害によるものであったと報告している(1)。本邦では、國谷らは、上殿皮神経障害は207例中24例(12%)であったと報告している(2)。
症状や診断
上殿皮神経の支配領域に一致するため、腸骨稜及び殿部を含む痛み。
腸骨稜の1横指尾側、上後腸骨棘の2横指外側に圧痛点を認め、その部位の圧迫により腰痛、下肢痛の再現性がある。神経ブロックなどによる症状の改善も診断基準となる(5)。
國谷らは、腰痛のみが59%であるが、下肢痛のみが8%、腰下肢痛が33%であったと報告しており、症状が腰痛に留まらない可能性がある(2)。
また、Maigne らは、osteofibrous tunnel を通っていなかった場合でも、教養筋膜貫通部を除圧することで症状が改善したと報告している(1)。
原因
以前は、上殿皮神経の内側枝がosteofibrous tunnel を通ることから特に絞扼されやすいとされていたが、Kuniya らの報告以降、内側枝以外もosteofibrous tunnelを通ることが示され、障害される可能性が示唆されている(4)。また、Maigne らは、osteofibrous tunnel を通っていなかった場合でも、教養筋膜貫通部を除圧することで症状が改善したと報告している(1)。
治療
神経ブロックによって改善されたとする報告が散見されている。
また林典雄(5)によると、臨床的特徴として、腸骨稜での圧痛以外に、その圧痛が殿部の皮膚を寄せると疼痛が軽減し、皮膚を引き下げると症状が増悪する所見が重要と考えているとのことである。
また林典雄(5)によると、臨床的特徴として、腸骨稜での圧痛以外に、その圧痛が殿部の皮膚を寄せると疼痛が軽減し、皮膚を引き下げると症状が増悪する所見が重要と考えているとのことである。
また、皮下組織の滑走動体が及ぼす神経自体への牽引刺激が疼痛に影響を及ぼしている可能性を示唆しているとのことである。
これらから、治療方法として『皮膚を緩める』ことで疼痛の軽減が成されると考えられる。
皮膚の伸張性UPとして、皮膚マッサージや四つ這いでの後方移動などが有効ではないでしょうか。
私見
あまり体感したことのない疾患ではありますが、無知の知の典型例でして、知っておくことで巡りあったときの治療方法として知っておく必要があると思います。
参考文献
(1) Maigne JY etc:Entrapment nueropathy of the medial superior cluneal nerve.Nineteen cases surgically treated,with a minimum of the two year's follow-up. Spine. 1997;22: 1156-9.
(2) 國谷 洋ほか:上殿皮神経の絞扼によると考えられる腰・下肢痛の調査. J spine Res.2011; 2: 1032-5
(3) 金 景成ほか:上殿皮神経障害のレビュー.脊椎外科. 2016; Vol30-2: 141-145
(4) Kuniya H etc:Anatomical study of superior cluneal nerve entrapment. J neurosurg Spine 2013; 19: 76-80
(5) 林 典雄:知っておくべき腰殿部痛の病態.理学療法研究; 2016; 33: 3-7
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