まずは、床反力について簡単な理解から始めましょう。
床反力とは
地球と接する際の地面からの無数の力重力に抗おうと、はねっ返す力のことです。
本来は、無数の方向性となるベクトルを一つのベクトルにまとめて表したものを
床反力ベクトルと呼びます。
普通に立っている時(静止立位時)には、二本足ですね?
その時には、単純に2本分の足底からのベクトルが現れます。
それを、合成したものを床反力作用点(Center of Pressure:COP)と略称します。
重力に対して床反力が勝れば、加速度が生じ、重心の移動が起こります。
何やら難しい日本語を並べてしまいましたね。
加速度とは:単位「α」
速度(速さ)= 道のり ✖️ 時間これは小学校で習いましたね?
速度の変化が、何らかの力で生じた力を加速度と言います。
車が時速30kmで走っていて、それを巨人が後ろからオリャーって押して、
速度が上がれば、それは加速度が生じているということです。
まぁ、加速度の話は、少し端折ってしまっても正直何とかなります。
理学療法士として必要な知識ではありますが、最低限には含まれないと私は考えています。
力のモーメント
次はモーメントです。これも面倒な用語ですが、これは必須の用語です。
モーメントの中でも”力のモーメント”これの理解が必須です。
力のモーメントとは:
力学において、物体に回転を生じさせるような力の性質を表す量である。力の能率(ちからののうりつ)とも呼ばれる。また、明らかな場合は単にモーメントと呼ばれることもある。とくに機械などで固定された回転軸をもつ場合、その回転軸のまわりの力のモーメントをトルク(torque)またはねじりモーメントと呼ぶ。 単位として通常はニュートンメートル(N m)が用いられる。(出典:wikipedia)
こう、重心を中心としてクルッと回る力が生じる力の性質のことです。
関節にこの力のモーメントを活用するのですが、関節モーメントと表現します。
関節モーメントは一体何で、一体どういう使い方をすればいいのかを説明していきます。
講義では、一応触れる人は多いのですが、理解していない学生さんも多いですし、
全然活用が出来ていない理学療法士の人も多いです。
まずは、言葉の理解を進めていきましょう。
ピンクの部分を仮に身体重心とします。
身体重心の真下にCOPがあると静止立位を取ることが出来ます。
黄緑色が床反力ベクトルとします。
※本来の大きさではありませんが、気にしないでください。
赤の矢印が床反力モーメントです。
青の矢印が今回の関節モーメント(力のモーメント)です。
関節の黒点から床反力ベクトルまでの間をレバーアーム(L)と呼びます。
左の人が正常な立位姿勢の人で、右の人が円背の高齢者の姿勢の人です。
身体重心は正常レベルの人でも、教科書的には足関節外果の2cm前方を通ります。
一方、高齢者の姿勢の人は、COPが足関節中心から離れてしまいます。
床反力モーメントという、また新しい言葉が出てきてしまいました。。。
これに相対するものが、関節モーメントです。
床反力モーメントとは、簡単に言えば、外力(地球からの力)
それに相対するものが、関節モーメント(人間が発揮していく力)です。
床反力モーメントに対して関節モーメントが等しい力が生じないと、静止立位では負けてしまいます。その結果、立っていることが出来なくなります。
足関節に注目してください。
つまり、足関節よりも重心位置が前方にあると言う風に思って下さい。
それはつまり、力を発揮しないでいると下腿は背屈方向にどんどん倒れていってしまいますね。
じゃあ、それに対応する力を発揮する時に生じるのが関節モーメントです。
今回は足関節に働く関節モーメントの呼び方としては、
足関節底屈モーメントと呼びます。
モーメント(M)= レバーアーム(L)✖️ 床反力ベクトル(F)
によって大きさが決まってきます。
あまり、難しく考えないで下さい。
歩行開始時のイニシャルコンタクト(IC)がありますよね。
足を思いっきり、どん!って着くようにすれば、床反力ベクトルは大きくなります。
その際には床反力ベクトル(F)が大きくなるため、モーメント(M)は大きくなります。
また、普通に立った後に高齢者のように右図の姿勢で立ってみて下さい。
足関節背屈位での立位ですね。
再び、普通に立ってみて下さい。
足関節中間位に近いですよね。
背屈位で立った状態で、下腿の力を抜いて立ってみてください。
出来ませんよね(笑)。
だんだん背屈位が大きくなっていき、膝をついたように倒れていきます。
正常立位と高齢者のような姿勢では足関節の中心とCOPの距離が離れています。
この距離を難しい単語にしたのが、レバーアームです。
背屈位で立っている為に必要な力を具体的に計算して求めることが出来るのがモーメントです。
そんなに難しくないでしょ?
じゃ、次は膝関節です。
今度は自分で考えてみましょう。高齢者の方の図をみて下さい。
膝の関節中心に対して、COPは後方を通っています。
イメージしにくければ自分で同じ姿勢を取ってみましょう。
この時に膝の屈曲と伸展どちらに力を入れなければ倒れてしまうか分かりますか?
伸展ですよね?
ということは、床反力モーメントは屈曲方向に働きます。
それに抗わないといけないため、関節モーメントは伸展方向に働きます。
レバーアームはどうですか?
正常姿勢よりも中心位置から遠いですね。
つまり、膝関節伸展モーメントは大きくなりそうです。
要するに膝関節への負担は大きくなりそうですね。
はい次、股関節
もう大丈夫でしょ?股関節中心よりもCOPは前方。
つまり、何もしないでいると地球の力(床反力モーメント)によって前方に倒れてしまう。
それに抗う関節モーメントは股関節伸展モーメント。
レバーアームは正常立位より長いね。
関節負担は大きくなります。
まとめ
・関節モーメントは、床反力ベクトルの通る位置(COPの通過点)と関節中心の前方か後方に通るかで、どちらの方向に働くかが理解できる。
・その大きさは、床反力ベクトルと関節中心の距離(レバーアーム)によって変化する。
・その大きさは、床反力ベクトルと関節中心の距離(レバーアーム)によって変化する。
もちろん、3次元の世界である為、前後方向だけでなく、左右方向の力も同じことが言えます。
現在の環境では、床反力は医療現場では目視することは出来ません。
あくまでも、イメージの世界になってしまいます。
でも、その知識があるのとないのとでは、運動学的な観察をすることが出来ず、
筋肉に偏った話しか出来ませんし、筋肉の働きの理解が進みません。
この辺の簡単な理解なしでは、観察による歩行分析はチンプンカンプンです。
しっかりと理解してから読むようにして下さい。
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