今回は、胸郭出口症候群(Throracic outlet syndrome:TOS)のリハビリテーションについて考えていきましょう。
胸郭出口症候群:TOSとは
引用:wikipedia |
第1肋骨・鎖骨・斜角筋で形成される胸郭出口およびその近傍における腕神経叢・鎖骨下動静脈の圧迫や牽引によって生じた上肢の痛みや痺れを有する疾患群である。1)
約95%が腕神経叢刺激過敏状態を呈する神経性TOSであり、血管性のTOSは少ない。2)
TOSには腕神経叢の圧迫と牽引による症状があることが客観的に示されている。3)
圧迫型は男性に多く、平均年齢は35歳。
牽引型は女性に多く、平均年齢は26歳。
症状
TOSの約25%に自律神経症状を認める。それらの症状としては、手指のむくみ・頭痛・吐き気・めまい・全身倦怠感などである。
圧迫症状
上肢挙上による症状の憎悪がある。鎖骨上窩における圧痛や上肢への放散痛がある。
肋鎖間隙における圧迫による症状である。
牽引症状
上肢下垂時に症状の憎悪がある。日常生活では、重いものを持った時などに症状が憎悪する。
Tinel様徴候
腕神経叢の過敏状態が肋鎖間隙あるいは小胸筋下間隙のどこで生じているかを特定するため、徒手による圧迫および運動テストを行う。運動テストでは、症状誘発テストと症状改善テストを行うことで、症状の特定を図ります。
90度外転外旋テスト
座位で肩関節90度外転外旋位での症状の再現・憎悪 陽性(+)背臥位で陽性の場合は、解剖学上、座位と比べ肋鎖間隙は広くなるため、より小胸筋下での絞扼が疑われる。(3)
3分間挙上負荷試験
これは、臨床中の評価は時間の都合上難しいかもしれません。Roosの推奨する診断テスト。
座位で肩関節90度外転外旋位、肘関節90度屈曲位で、手指の屈伸動作を3分間継続させる。この運動負荷に耐えられない場合 陽性(+)(3)
評価項目
評価項目は何があるでしょうか?問診
TOSは問診がとても大切です。
特に日常生活ですね。
どんな仕事や生活をしているのかを聞きましょう。
特に留意しなければならないのが、その時の作業姿勢です。
TOSの多くの場合、座位でのデスクワークをされている方が多いです。
その時の姿勢がどうなっているか確認しましょう。
姿勢観察
パソコン作業時の典型的な悪い姿勢はご覧の通りです。上から順に・・・
頭部前方偏位
頚椎伸展位
円背
となっていますね。
立位姿勢に目が行きがちですが、ことTOSに関しては、座位姿勢にもしっかり着目できる様にしましょう。
疼痛評価
肩・頸部・上肢の疼痛を訴えるケースが多いです。痛みの部位を確認しましょう。
もちろん、安静時痛・動作時痛の確認も怠りなく・・・
頭痛を訴えるケースも多いです。
慢性期で我慢の限界で来る方も中にはいます。
その時は様々な症状を訴えるケースも多いです。
その辺も含めて評価する様にしましょう。
リハビリテーション
単純に言ってしまえば、筋緊張の改善です。このTOSは、姿勢観察がとても重要であり、頻発する姿勢は、頭部前方・頚椎伸展位である。
デスクワークの作業をする人に頻発されるのは容易に想像がつくであろう。
日本人的な考え方であるが、日本人は体よりも仕事を優先させてしまう傾向にあると考えています。つまり、『痛いけど我慢して仕事に打ち込む』です。
その心意気は、どこかでは賞賛されるものでしょう。しかし、体の方は悲鳴しかあげていません。
自分の体と向き合うことが大切です。
慢性的な症状がある場合は、認知運動療法が適応になるケースかもしれませんね。
慢性疼痛と認知行動療法を理解する
さて、実際のリハビリテーションに移りましょう。
姿勢改善
若い子にありがちなのが、介入が肩〜頸部のみに限局した徒手療法です。ですが、TOSは全身的な介入が必要なケースが多いです。
それが姿勢の改善ということです。
立位・座位姿勢の改善が為されなければ、いくら徒手的に筋緊張の緩和が出来たとしても、同じ姿勢で作業をすることによって 再発必至です。
それを防ぐには、日頃の姿勢改善が必要なのです。
デスクワークや立位姿勢の改善を含めた理学療法を展開していく必要があります。
そのため、体幹の筋力強化を含めた理学療法を展開することで、症状の軽減・再発の予防をするようにしていきましょう。
筋緊張の緩和もとても大切です。
リラクセーションも含めて、しっかり行うようにしましょう。
装具療法
慢性疼痛で、装具の装着によって改善がみられる場合は適応だと考えます。
体幹のコルセットと同様で、常時着用は避けなければならないため、あくまでも補助的な要素での活用に留める様患者教育が必要です。
参考文献
1)Peet RMら:Thoracic outlet syndrome:1956
2) Lee JTら:Thoracic outlet syndrome. Physical Medicine and Rehabilitation : 20103) Ideら:Compression and stretching of brachial plexus in throacic outlet syndrome produced by provocation manoeuvers : 2003
3) 著:飯田博己ら 肩関節周辺神経障害 腋窩神経障害・胸郭出口症候群(腕神経叢過敏)に対する理学療法:2013