IC・LRときたら次はMSt(ミッドスタンス)です。
歩行周期の12〜31%の部分を指します。
ここでは床反力ベクトルの向きが変わることで、関節モーメントの方向も変わるため、重要な部分になります。
しっかり理解を進めましょう。
床反力ベクトルと関節モーメントの動き
ミッドスタンス(以下MSt)は前期・後期に分かれます。
左図:MSt前期 右図:MSt後期 |
このMStは床反力モーメントの転換点となります。
前期と後期で膝関節中心の後ろ→前、股関節中心の前→中央から後ろ、転換されます。
これがどういうことかを順を追って説明していきましょう。
ロッカー機能(ロッカーファンクション)
とその前にLRから続くロッカーファンクションの方をご説明致しましょう。このMStでのロッカーファンクションは、アンクルロッカーと言われます。
足関節を軸にしたロッカーファンクションです。
足関節が底屈5度→背屈5度まで動く大切な部分となります。
この動きを制御する筋肉が下腿三頭筋です。
足関節の関節中心よりも床反力作用点がもう前方に位置しているのが分かりますね?
そうなると、床反力モーメントは背屈方向に働きます。
簡単に言うと、力を入れなければ背屈方向に足が倒れて行きます。
その制御をしなければいけないのは、底屈筋である下腿三頭筋です。
この下腿三頭筋がうまく活用されることで、下腿が前方に倒れる勢いを維持しながら、スムーズな歩行をもたらすことが出来るのです。
ロッカーファンクションの一旦、復習ですね。
IC〜IRは前脛骨筋を中心とした筋肉によって、底屈をコントロールします。
そして、MStに床反力作用点と関節中心の関係性が変わり、下腿三頭筋をはじめとした底屈筋の収縮が強くなります。
膝関節
足関節の方は、もう話が済んでしまったため、飛ばします。膝関節に参りましょう。
左図:MSt前期 右図:MSt後期 |
見かけ上は完全伸展しているように見えますがね。
この膝関節は大きな転換点を迎えます。
そうですね!
前期では、関節中心の後方を床反力作用点が通っています。
後期では、関節中心の前方を床半力作用点が通っています。
つまり、前期では、床反力モーメントは屈曲方向に作用します。
力を入れなければ、膝がカックンしてしまいます。
それを防ぐために、支持するためにそう、大腿四頭筋が働きます。
それが後期になると、床反力モーメントが伸展方向に作用するため、
何もしていなくても、伸展方向に力が作用するわけです。
つまり、大腿四頭筋の役目はひとまず終わりました!
ここはとても重要です。時代の転換点が重要なように、この転換点はとても大切なフレーズなのです。
さ、股関節行きましょう。
股関節
左図:MSt前期 右図:MSt後期 |
股関節も転換点です。
関節角度は屈曲20度→0度まで伸展します。
IC〜IRまでは、床反力作用点が股関節の関節中心よりも前方に位置していたため、それに対応するように関節モーメントは股関節伸展モーメントが作用していました。
MStの前期も然りです。
しかし、MSt後期から床半力作用点が股関節中心よりも後方に位置し始めるため、何もしなくても、伸展方向に力が働きます。
つまり、伸展筋たちのひとまずの役目は終了ということです。
あ、ここまでは完全に矢状面でのお話ですので、そこはしっかり理解していてくださいね。
治療に活かす
いかがでしたでしょうか?ここまで、IC・LRときて、MStまで来ました。
ここまでで様々なモーメントの変化が起こっています。
MStまでで分岐点を迎える股関節・膝関節・足関節。
これらから考えるとMStだけの練習をしても意味がないことが分かると思います。
片脚立ちが上手く出来るようになったからといって、歩容が改善するわけではないのです。
ICで踵接地をすることによって生じるモーメント、IC〜MStまでのロッカーファンクションが生じなくなることによる不利益などを自然と考えることが出来るようになっていきます。
ICで踵接地時、股関節が屈曲位になってたりしてしまうとどうなってしまうのかな?
とか、一度理解してしまえば、思い出す作業がかなり簡単になります。
正常歩行を理解した上で、異常歩行を理解しないと、いちいち異常歩行がなぜ起こるのかを暗記作業で覚えなければなりません。
そのため、観察による歩行分析を手垢がつくまで読み解く必要性があるのです。
簡単な理解から始めるためにもこのブログをしっかりと書き上げていきたいと思います。
それでは。。。
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