そもそもROMってなぜするのか?
ROMってなぜするのか?
関節可動域(Range of Motion)っていうのは実習に行けば、大体の学生は行う評価ですね。じゃ、それは何でするのかな?っていうのを学生の立場から考えておかなければならないことは何なのか?それを紐解いていきましょう。
まず、関節可動域の参考可動域はもう覚えたでしょうか?
実習では、「あなたはどのくらい覚えていますかね?」って感じで、「参考可動域は?」と聞かれることもあるでしょう。
じゃ、そのROMの評価をどのように活かすことが出来るのかを知らなくては、評価として成り立ちません。
まず、なぜするのかを知ることから始めましょう。
①参考可動域と比較する
これは特に加えることはありません。左右差も含め、患者さんのROMは参考可動域とどのくらい違うのかを知ること自体は、とても重要です。もちろん、5度とかそのレベルであれば、大きな変化はないかもしれませんが、大きなROM制限は動作的な問題やADLの低下をもたらすため、参考可動域との比較は必要な要素となるでしょう。
②動作との関連を考えるための評価
動作との関連。これは例えばADLとの関連。
そして、歩行や立ち上がりなどの動作との関連などにおける重要事項になります。
ADLにおける例を挙げましょう。
例えば、よくあるのが変形性膝関節症における正座の獲得。
正座の獲得には膝関節角度がおおよそ150度程度必要とされています。
一般的な人工膝関節置換術の膝関節の最大角度は120度程度となっていますので、
正座の獲得は困難です。
これは分かりやすい例ではありますが、ROMを測った際に、このROM制限では、このADL動作は難しいとなった時に、代替手段や補助道具の使用を考えて、提供することもリハビリテーションの中で重要な役割となるでしょう。
次に歩行においての例を挙げましょう。
股関節伸展のROMが0度と仮定しましょう。
その時に、歩行はどのような形になるでしょうか?
ターミナルスタンス(立脚後期)における股関節伸展は20度とされています(参考文献1)。
今回、股関節伸展のROM:0度ということは、ターミナルスタンスへの移行が困難となりますね。
そうすると、歩幅が広くならない。歩行速度は遅くなりそう。などなどの予想が出来ました。実際の歩行と照らし合わせていきましょう。
③ROM制限が生じている原因を検査をしながら探る。
これは、総合的な、統合と解釈をする時の一つの要素をみていくためという所です。治療プログラムの選定のために、局所のアプローチもしていく理由を探すことも大切です
。
そもそもROM制限がなぜ起こるのかを考えねば、今回の③は考えられません。
④そもそもROM制限って何で起こるのか?
これは、非常に分かりやすい解説がありましたのでご紹介させていただきます。理学療法学に掲載されている為、無料で閲覧可能です。
原著をご覧になることをお勧めします。こちらのリンクからどうぞ。
(関節可動域制限の発生メカニズムとその治療戦略)
ROM制限の原因
①関節周囲の軟部組織に原因がある:皮膚・骨格筋・関節包など
②骨・軟骨といった関節を構成するそのもの
理学療法でどうにか出来るものは、どう考えても①ですね。
ROM制限は拘縮(つまり、①の器質的な変化)によって生じたもの。
よく例として、寝たきりによる足関節の底屈位保持による背屈制限が挙げられます。
これが、生じてしまうと離床した際に底背屈0°が取れなくなってしまいますね。
そうすると、座位・立位時に足底を地面に着くことが出来なくなってしまう為、支持基底面を作ることが困難となってしまいます。
それを予防するために、早期離床が大切であるとともに、離床がまだ困難な場合でのベッド上介入の場合でも足関節の拘縮を作ってはいけないというのは、最早常識レベルです。そのためには、病棟との連携は不可欠であり、足関節を含めたベッド上でのポジショニングの工夫などはとても大切なことです。
脱線しました。
なぜ、拘縮が生じてしまうのか?
それは、共通して不動(動かさない)ことによる影響とされています。
筋膜にはコラーゲン線維があります。
最近の研究によって、筋膜内のコラーゲンの構成が明らかになってきていますが、
網目状の「女性のストッキング」のような規則的な構成をしています。(参考文献3)
筋膜のコラーゲン配列の例 |
これが、不動によって組織の癒着を起こし、筋性の拘縮を起こしていきます。
このように、コラーゲンが重要な要素となっている可能性が示唆されており、今後も明らかになっていってくれればと考えています。
参考文献(3)は英語の著書となっていますが、今後も読み進めていき、ヒントになりそうな部分を紹介していければと思っています。
まとめ
結論を申し上げるとROMだけの評価をした所で何も始まりはしません。でも、評価実習では皆ROMから始めちゃいます。
なぜなのか?
それは、学生さんがたくさん練習してきている評価がROMとMMTだからです。
それ以外は、分からないことだらけ。
自信が少しでもあるものから始めていく。
いいと思います。あなたは何一つ間違っていません。
現状、評価実習に向けて何を自主学習しなければいけないのか?
そういうことも全員が必ずしも把握出来ないで、痛い目を見ることが多いのです。
それを少しでもなくすことは、ブロガーとしての命題と考えています。
原点に立ち返って、色々な評価のUPDATEをしていきたいと思います。
この評価をした時に何を得ることが出来るのかを考えましょう。
股関節の角度は〇〇度でした!
だからなんなんだ?ってならない様にしていきましょう。
参考文献
(1)観察による歩行分析 (2)関節可動域制限の発生メカニズムとその治療戦略 著:沖田 実
(3)Fascia in Sport and Movement
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